2人で崖から落ちて、みんなからさんざん心配かけたと怒られた日。 大輔は、そのあと結局週末含めて3日間学校を休んだ。 睡眠不足だった体もあれから家に帰って翌日の夜まで爆睡したら回復したということだったが、体力が完全に元に戻るまで、と家族にもそして何より心配をかけた仲間達より、謹慎令を出されてしまってベッドに缶詰状態らしい。 僕も昨日には見舞いに訪れたのだが、退屈だボールを蹴りたいだのと文句たらたらの、元気そうな彼と会うことが出来た。 その顔にはもうこの間までの暗い影は微塵も感じられず。 いつも通りの彼の笑顔に、ひどく安心したのだった。 さて。今日週明けの日には、大輔も元気に登校してきて、放課後にはまたデジタルワールドで会えるはずだった。 この間の見舞いのときは、退屈で鬱憤の溜まっていた大輔の愚痴を延々聞いていたせいでそんなに意識することもなかったが、考えてみれば、この間はかなり恥ずかしい顔も見せたし、恥ずかしいことも言った・・・気がする。 (ど・・・どんな顔で、会おう) 大輔にはかなり情けない部分まで知られてしまった自分に、はたしてどう対して良いものか戸惑いが隠せない。けど、きっと変に構えたりしたら、きっと気まずいだろうし。 気まずいのだけは避けたい。 これ以上お互いの気持ちが空回りして傷つくのはゴメンだと、この間で嫌って程身にしみてわかったから。 そう考え始めたら止まらなくて、慌てて僕は彼にあったらどうしようか、かなり本気で考えだした。 必死になって、考える。 どんな顔で会えば、普通で。 そっけなくなったりしないか。 けれど考えれば考えるほど頭の中はぐちゃぐちゃになってきて。 放課後は刻一刻と近づいているというのに、僕はたかがこんな事ぐらいで泣きたくなる気持ちだった。 まあ、たかがとはいえ、この時の僕にとっては大事なことだったのだから仕方がないが。 結局、学校が終わってもその答えは出なくて。 家に帰った僕はワームモンに縋るように尋ねてみた。 もう、誰でも良いから答えて欲しい。 そうしたら、ワームモンは、 「じゃあ、賢ちゃんだったら、どうされると嬉しい?」 と、謎かけのような答えを僕にくれた。 僕だったら嬉しいこと?? 僕が、喜ぶこと。 ・・・・・・笑顔が良い。 その答えは意外なほど単純だった。 そう、僕ならば笑う大輔の顔が見たいと思う。暗く沈んだ顔ではなく、幸せそうに笑う、ふざけて笑う、馬鹿馬鹿しく笑う・・・そんな、明るい表情が見たい。 記憶の中にある、大輔のいくつもの笑顔を思い浮かべながら。 僕は、次に彼にあったときは今の僕で出来る限りの笑顔を向けよう、と思ったのだった。 僕に笑顔を取り戻してくれたのは彼だったから。 果たして。 デジタルワールドの空の下、僕と出会った彼は。 その、晴れた青空よりも晴れやかな笑顔で、僕に微笑んだ。 end. back◆ 始動のエピローグ蛇足。幸せそうな賢ちゃんです。 |